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大切なのは、謙虚に、素朴に、そして素直に生きること・・・
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★2010/01/09 (Sat)

高知新聞に「声ひろば」というコーナーがある。今日、何気なく紙面をめくっていたら……高校3年の時、予備校時代とお世話になった、数学塾の先生が寄稿していた。彼にはもう、ちょうど10年ほど会っていない。

本当に、いろいろとご教授いただいた先生だった。数学の実力に関しては、おそらく県内進学校のどの数学教師よりも優秀で、その独自のキレのある解法は、大手予備校の数学講師にも負けていないと、数学が一番の武器だった当時の自分は絶大な信頼を置いていた。

年齢や経歴など自分のことを話したがらない謎の多い先生だったけど、時として僕らと同じ目線で、世間話や恋愛話などをしたのも覚えている。一番印象に残っているのは、確か10年前のこの時期、センター試験直前の冬期講習だったと思うけれど、一斉授業が始まる前、朝8時くらいから、僕一人のために東大数学講座をやってくれたことだ。わざわざ8時前に来て、エアコンなどない古い教室に石油ストーブを焚いてくれていたことを鮮明に覚えている。しかも、講座はボランティア。わずか一人の塾生のために、なかなかできることじゃない。絶対、東大に合格してほしかったのだと思う。

けれど、僕は東大に完敗した。一番の武器だった数学で大コケしてしまったのが、大きな敗因だった。まだ受験失敗のショックを引きずっていた大学入学直後のGW、帰郷した折に先生のもとを訪ねた。でも、そのとき彼と何を話したのかは全く覚えていない。ただ、落ち込んでいる姿を見せたくないと気丈に振る舞ったことと、その時の先生の顔がえらく無表情だったこと、
ほとんど彼の口から言葉が出てこなかったことだけ、微妙に記憶に残っている。

僕は、その無表情と口数の少なさに、妙に腹が立った。実は、先生はずっと僕に対して「東大以外は大学じゃない、東大に受かれよ」と言っていた。だから、「君にはがっかりだ、失望したよ」とでも言っているように思えたからだ。いまにして思えば、どんな言葉をかけてあげたらいいのかわからず、躊躇していただけかもしれない。ただの被害妄想だったのかもしれない。でも、正直、慰めてもらえるだろうという期待があった当時の自分は、裏切られたような気持ちになった。だからそれ以来、もう彼のもとを訪れないことにしたのだった。

さて、話を高知新聞に戻す。先生の記事は、「学業には目的意識」というタイトルだった。かつての教え子が、医師やプログラマーや研究者になって、帰省の際に訪ねてきてくれる。そして、それほどしっかり者でなかった彼らが学業をおろそかにしなかった理由を考えてみるに、それは「目的意識」だろうと。末尾には、「全員が同じようにできる必要はない」という言葉さえあった。

考えさせられた。ここで先生の言う「目的意識」とは、「○○大学に入る」といった矮小なものではなく、もっと人生全般を見据えた大きな志のはず。先生は10年前もこの考え方を持っていたのだろうか? もしそうだとしたら、なぜ僕には「東大に行け」と言い続けたのだろうか? 「東大に行く」ことが目的となっていた自分を、なぜ諭してくれなかったのだろうか? その後の僕の苦悩の責任を先生になすりつけるつもりは毛頭ないが、本当に信頼していた方だ。木しか見えなくなっていた若造に対して、森を見るということを教えてほしかったな……。記事を読みながら、当時を思い出し、ちょっと切なくなった。

そして10年後のいま、未だ将来に対してしっかりとした目的意識を持てず、悶えている自分がいる。世間の価値観に必要以上に迎合せず、自分自身の魂の声や判断基準に沿った生き方を歩み始めたときこそ、胸を張って先生に会いに行けると思う。そのときには、お世話になった感謝の念を、もう一度伝えたい。

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